ドラマ陸王原作小説第6章のあらすじネタバレと感想考察



ドラマ陸王原作小説第6章あらすじネタバレ

飯山の妻、素子はビル清掃会社とスーパーのアルバイトを掛け持ちし、夫と二人の生活を支えていた。

2年前に会社が倒産したあと、金融業者からの仕返しを恐れ、迷惑をかけた取引先の人間と会うことを避けている飯山がほとんど働かなかったからだ。

二人が飯山の元同級生から格安で借りているアパートは、土木会社と同一敷地内にあるため関係者以外のものが立ち入りにくくなっており、姿をくらましたい飯山にとって都合がいいものだった。

一日部屋でゴロゴロしている飯山に対し、ある日素子は「どうやって借金を返すつもりなのか」「仕事を見つけたら」と切り出す。

すると飯山は、東京第一商事という大企業からヨットの部材に特許を使わせてほしいと言われており、採用されれば大きな商売なるはずだと言い出した。

特許を使わせてやるだけで年間数千万になるはずだ、と。

素子はそんな飯山の話を聞きながら、二人の過去に思いをはせる。

出会った頃の真面目で堅実な飯山が、倒産によって一発屋のように変わっていったことが気にかかっていた。

地道に夢を叶えようとする人だったのに、今は一足飛びに大儲けしようということばかり考えている。

不安になる素子の前に、さらに追い打ちをかけるように金融業者らしき暗い人影が現れる。

大きな仕事が決まれば逃げ隠れする必要もなくなる。

そう言っていた飯山だったが、結局、第一商事との仕事は決まらず絶望する。

そんなときにこはぜ屋の宮沢から、会社を見に来てほしいという電話がかかってくる。

素子に説得され、ついに飯山はこはぜ屋を見に行くことになった。

従業員と軽口を交わしながらも、老舗であるこはぜ屋への羨望や元繊維業者、元経営者としての側面を覗かせる飯山。

そして、たまたま故障したミシンを修理する際には機械いじりの鮮やかな手つきを見せた。

陸王という新規事業への取り組みを説明しながら、新しいことに挑戦しようとした志は同じはずだ、と思う宮沢。

飯山はこはぜ屋を見学する中で同社の現状を知っていくが、宮沢に再度特許を使わせてほしいと頼まれても、どうするか明言しないままこはぜ屋をあとにした。

シューズを作るということは、新たな素材を捜し歩くことなのか。

宮沢は安田と、今回は縁がなかったのかと話しながらため息をついた。

諦めかけていた宮沢の元へ、予想外に特許使用を許可するとの連絡が飯山から入る。

ただ、使用許可には、飯山を陸王開発プロジェクトに参加させることという条件が付いていたのだった。

ドラマ陸王原作小説第6章感想考察

この章では題通り、敗者である飯山の事情が語られている。

生まれてから会社をつぶしてしまうまでのこと。

それから、かつての取引先から隠れ、借金をした相手に怯えて一日部屋でゴロゴロして過ごす現在のこと。

はじまりはきっと、自分がやりたいことを突きつめたいというチャレンジ精神だったのだと思う。

そこにのめり込むうちに、本業がおろそかになって、気がついた時には引き返せないところまで来ていたのだろう。

特許技術で一発逆転を狙ってはみたものの、形になる前にどうにもならなくなってしまった。

それでも、奥さんがいたからまだ踏みとどまっていたのではないかと思う。

日々の生活のために働いてくれるだけじゃない。

長い人生で、うまくいかない時に離れずそばにいてくれる。

そんな存在があるだけで、どうにかもう一度這い上がってやろうという気力が生まれるのではないか。

そんな飯山の前に、チャンスの神様がやって来た。大きな仕事と、小さすぎて受けたところでどうしようもないと思われる仕事。

どちらがチャンスの神様なのか。

大きく出ようとしている飯山と、そんなにうまくいくとは思えず不安になる妻、素子。

そんな二人の前に、過去からやって来た影がチラつくようになる。

こんな先行きが見えない生活は、辛いだろうなと思う。

過去の失敗を引きずって逃げ隠れするような状態で、チャンスが巡ってきたと思えば裏切られる。

そんな状態が続くのは、ただ貧しく暮らすのとも違う。

心の平穏がない。

いつも追われている気持になるだろうし、敗北者というレッテルを自分自身に貼りつけたまま生き続けるのはしんどい。

一発逆転なんかじゃなくても、どうにか這い上がって欲しいと思う。

口は悪いし、ダメ人間としか思えない状況なのに、なぜか応援してしまいたくなる魅力が飯山にはある。本当に不思議だ。

憎まれ口をたたきながらこはぜ屋を見学して回る飯山に、仕事に対する愛情というか、情熱のようなものを感じるからだろうか。

新しいものにチャレンジしようとするこはぜ屋に、かつての自分を重ねてみていたのかもしれない。

そんな雰囲気がある。

失ったものを持っている宮沢を羨んでいるだけかもしれないが。

とにもかくにも、特許の使用料などお金のことは置いといて、陸王開発プロジェクトに参加したいと申し出た飯山。

それだけでもう、こはぜ屋さんと飯山のことを応援したくなってしまう。

片方には元が付くけれど、腐っても経営者同士、通じるものがあるだろう。

きっと将来大きな力になる。

ひねくれ者だけれど、秘めた力を持っているように思える飯山の登場で、ますます先の展開が気になる。というところで今回はおしまい。

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