ドラマ陸王原作小説第10章あらすじネタバレ
月に一度開かれるこはぜ屋の「経営会議」。
富島の細かい指摘の後、いつもなら終わるはずの会議で宮沢は新製品の開発を提案する。
地下足袋のソールを、生ゴムからシルクレイに変更するというもの。
いつも厳しい意見ばかりの富島も「やるべきです」と賛成し、こはぜ屋の新たな挑戦が始まった。
日本選手権で毛塚が好成績を収め、出場すらできなかった茂木はひたすら悔しさをかみしめる。
そこで、足の故障で脱落した京浜国際マラソンで勝つことこそ、今の自分を克服する場にふさわしいと目標を決めた。
小原は毛塚の走りを見て「シューズの勝利だ」と胸を張り、ライバル会社の連中が悔しがっているだろうと想像して笑いをかみ殺していた。
地下足袋の新製品『足軽大将』は、かなり強気な価格設定にもかかわらず驚くほどの好調ぶりを見せる。
勝負どころと見て、足袋の製造計画を変更して足軽大将の製造を増やす計画を立てたこはぜ屋。
ヒット商品の登場に、富島さえも「あがいてみるもんだ」と興奮気味に資金調達へ前向きな姿勢を見せる。
村野と茂木は、走り込みながら陸王の細かい調整を続けている。
今まではソールにばかり視点を置いていたが、ここでアッパー素材の弱さが指摘された。
軽いうえに保温性と通気性、さらに耐久性が欲しい。
難しい要求に、村野からアトランティスに出入りしている業者である関東レーヨンを紹介してもらうが、小口での発注は扱っていないと門前払いされてしまう。
足軽大将の追加生産は今のところ順調にいっていたが、宮沢には気になっていることがいくつかあった。
まずは製造装置の耐久性。
元々試作用の機械であるため、これほどの大量生産に耐えられるのかということ。
そして、縫製課もギリギリの人数で、誰か1人が病欠しても生産計画をクリアしていくのは難しい。
さらに、増産による仕入れ代金の増加。銀行からの追加融資が受けられるかということだ。
担当の大橋に、運転資金の増加を伝える。
足軽大将の軽さ、どれだけ売れているかを伝えても「ふーん」と興味があるのかないのかわからない態度をとる大橋。
さらに、運動靴じゃなくて地下足袋を作っていたんですっけと言いはじめる。
陸王にしても、完成してるじゃないですかと言い、改善するために努力しているという言葉にはそっけない返事しかしない。
アッパー素材を扱っている会社と取引があれば教えてほしいと言っても、「そうですね」という気のない返事。
担当者だけで銀行の印象が全然違うな、と思わずにはいられない宮沢だった。
ドラマ陸王原作小説第10章感想考察
印象としては、嵐の前の静けさと言ったところ。
いろんなことが上手くいっているかのように見えて、少しでも歯車が狂えば、どうなってしまうかわからない危うさを感じる。
九章で宮沢がひらめいた発想、地下足袋のソールをシルクレイに変えて作られた「足軽大将」が思わぬ売れ行きを見せる。
新規事業の副産物でありながら、陸王のマイナスをプラスに転じるほどの勢いだ。
そのおかげで、新規事業に後ろ向きだった富島さえも、会社をもっと盛り上げようという勢いに乗ってきている。
茂木だってライバルの活躍に悔しい思いをかみしめてはいたが、そのおかげで目標がはっきりしたし、ニュー陸王の細かい調整を進めてもいる。
敵であるアトランティスの小原には、今のところ自分の好調ぶりしか見えていない。
ウサギとカメで言えば、完全に相手をなめきってお昼寝の真っ最中。
それでも危ういと思うのは、足軽大将がぎりぎりの生産計画の上で作られていること。
シルクレイの製造設備は試作品用で、量産型ではないためいつどうなってもおかしくない。
そもそも製造設備を新しく準備するのは難しい、と飯山とのやりとりで問題にもなっていた。
それを、どうにか延命している状態なんだから、常に綱渡りしているようなものだ。
縫製課の人員もギリギリで、一人でも休めば間に合わなくなる。
そして、仕入れ代金が増加したことによって、資金調達の必要が出たわけだけれど、それが果たしてうまくいくのかというところ。
ただでさえ、定期貯金を解約したことで銀行との関係はイマイチになっているというのに。
足元がぐらついているのはこはぜ屋だけではない。
茂木の同僚が毛塚のレースを見てうつろな表情を見せていたのが気にかかるし、調整中の陸王の茂木モデルはアッパー素材を一から考え直さなければいけなくなっていた。
しかも、紹介してもらった業者には門前払いされ、思い当たる業者も全くない状態なのだ。
さらに、今は大企業をかさに着てふんぞり返っているアトランティスも、今後どう出てくるかわからない。
そして、坂本に代わって銀行の担当になった大橋もダークホースと言っていい。
まだどんな人間かよく分からないという意味でのダークホースで、穴馬とまで言っていいのかは疑問が残る。
今のところはただただ、やる気がなくて、素っ気ない、薄っぺらな対応しかできない人間なのかな、といった印象。
今のところ、上の意向を伝えるだけのお使いしかしていない。
これがうまく育つのか、敵対してしまうのか。
最後に、飯山がこはぜ屋に入ってからはまったく触れられていない部分、金融業者の存在も忘れてはいけない。
物事がうまくいき始めた時に限って、足を引っ張るものが出てくるのが世の常なのだから。