ドラマ陸王原作小説第9章のあらすじネタバレと感想考察



ドラマ陸王原作小説第9章あらすじネタバレ

 相変わらず銀行と衝突する宮沢。富島は間に立ってどうにかとりなすが、新規事業や飯山に対してはいまだに否定的な態度のまま。

村野が加わったソール開発のほうは、狙うターゲットを絞り込んで試作品づくりに取り掛かることになった。

それに先立って、まずは出来上がったソール30個すべてを使って茂木専用のニュー陸王が完成した。

 ライバルの毛塚が好記録をだして着々と上を目指し進んでいる一方で、茂木はいまだに足踏み状態。

怪我は回復し、走法も完成していると言っていい。今茂木に必要なのは自信ときっかけだった。

 そのタイミングで宮沢は村野と共に茂木を訪れる。

村野に対する周囲の反応を見て、改めてその凄さが感じられる。

村野は茂木の走りを見て陸王を勧めながら、自分を信じろとアドバイスする。

自信を失っていた茂木は、それを見抜いた村野の言葉にハッとする。

陸王を履いて部内トライアルに臨んだ茂木。

途中までいい走りを見せていたが、ここからが勝負というところで足がつってしまう。

完走できなかったことより、あのまま走っていても一位になれなかったこと、目標のタイムに届かなかったであろうことを悔しがる。

茂木の仕上がりを見て、小原は投資する価値のない商品だと決めつけていたことを脇に置いてサポート復活を決める。

村野の後を引き継いだ佐山も、小原も現場一筋でカリスマとして一目置かれている村野に対し、敵対心を抱いていた。

シューズ作りは、ランナーからのフィードバックを元にひとつひとつ修正し、やっとひとつの製品が出来上がる。

一度の修正で数か月かかることもある。

進むべき道を決めたら、あとは最大限の努力をして可能性を信じるしかない。

保証のないものを信じるのが一番苦しい。

困難な現実に打ち負かされそうになる、自分との闘い。

でも、それは茂木や他のランナーも同じ。

真剣に向き合えば向き合うほど、あるかないかわからない自分の才能や可能性を信じるしかない。

今の宮沢には、彼らの苦しさや心細さがわかるはずだと力説する村野。

村野はさらに宮沢に対し、止まっている時のフィット、裸足感覚には何の意味もない。

走る、蹴る、踏む。動きの中でのフィットが重要だと言う。

 新規事業の必要経費について打ち合わせ中、富島は本業に専念するよう強く説得する。

かつて会長、つまり宮沢の父が同じように新規事業を立ち上げた時に失敗し、借金まみれになって「止めて欲しかった」と悔し涙を浮かべたことが忘れられないと言う。

もしもの時を考えて止めるのが自分の役目だ、と。

しかも、その新規事業とはかつての陸王のことだった。

 「今頑張っているからこそ得られることだってある」妻の励ましによって、シルクレイという新しい素材や、ランニングシューズに関して得た様々な知識を、逆に本業の足袋へ活かすことができるのではないかと考え始めた宮沢。

まさにコペルニクス的転回ともいえる真逆の発想だった。

ドラマ陸王原作小説第9章感想考察

 章題はニュー「陸王」となっている。

もちろん、陸王は一度製品として売れた実績があって、新しいソールになった陸王は「ニュー」ということになる。

でも、この章を最後まで読むと、このニューには他の意味もあると気付かされる。

 富島は新規事業を考え始めた最初から、一貫して否定的な態度を崩さない。

ここではその理由が語られている。

もともと「陸王」という名のマラソン足袋があったことは明らかにされていたけれど、それが先代の考えた新規事業だったこと、大失敗して倒産間際まで追い込まれたことまでは明かされていなかった。

過去の失敗を繰り返さないよう、ストッパーになるのが自分の役割だという富島。

確かに、みんな一丸となってひとつに向かっていくのはすごい力を発揮すると思う。

だけど、それはもろ刃の剣でもあって、止める人がいなければ本当に行くところまで行ってしまう。

それが大失敗の道だったとしても。

反対する人がいれば、冷静に立ち止まって考えることもできる。

憎まれ役は辛いけれど、やはり必要な存在だとも思う。

だいぶ脱線したけれど、このかつての陸王があってこそのニュー「陸王」という側面。

この伏線、このタイミングでのカミングアウト、すごいとしか言いようがない。

 そして、八章でアトランティスを退職した村野。

一方的にこはぜ屋がアトランティスをライバル視していたところから、敵の味方は敵といった形で、村野が加入したこはぜ屋を敵視しはじめるアトランティスの小原と佐山。

現場主義対大企業に胡坐をかいた自己満足。

どっちがランナーのためになるかは明らかだけれど、名の知れた大企業はやはり強い。

小さなプライドから始まる、大きな闘い。こちらも目が離せない。

怪我から回復し、自信を取り戻すきっかけを掴んだ茂木のこれからも気になるところだ。

シューズの開発者とランナー、全く違うように見えて、二人三脚で歩む両者には共通点も多い。

方向性を定めたら、最大限の努力をして可能性を信じるしかない。

成功するか、失敗するか、保証のないものを信じ続けなければいけない。

まさに、自分との闘い。

それはたぶんアスリートたちも同じで、真剣に向き合えば向き合うほど、あるかないかわからない自分の才能や可能性を信じるしかない。

自分の中にしか答えはないのに、やってみるまで、結果が出るまで、もしくは自分が諦めるまでどうなるのかわからない。

お互いに苦しさや心細さが分かるからこそ、励まし合って支え合う存在になれる。

村野はそんな両者を繋いで、さらに支えてくれる。本当に頼りになる味方だなぁと思う。

最後の最後、ニュー陸王がとりあえず形になったところでもう一展開。

新しい素材や、今までなかった知識を得たからこその原点回帰。

新しい技術と知識を、本業の足袋へ活かすという発想が生まれ、またページをめくるのをやめられなくなってしまう。

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